夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
男の存在は私の憧れ、そしてなりたい姿だった。
この男は素直で、嘘をつく事さえ嘘吐きで……。全部が全部、この男の本当の姿なのだ。
アカリ様がこの男と居て、お嬢様と召使いという身分差を超えて楽しそうにしていた理由がやっと分かった。
飾らず気持ちに寄り添って、相手の心を自然に解放させる事が出来る。
きっと仕事でありながら、仕事ではなく。他人なのに他人として扱わず、まるで日常が流れていくような穏やかな時の中で、次第に夢の中へ誘っていく。
これが、伝説の夢の配達人のヴァロン。
勝手にライバル視していた自分が恥ずかしい。
この男は使用人とではなく、また主人とではなく、アカリ様というただ一人の存在とずっと目線を合わせて過ごしてきたのだ。
そう分かったら悔しさよりも、私の大切なお嬢様を大切に想ってくれているこの男の存在を……心から嬉しく、同時に羨ましく思えた。
「……分かりました。貴方の処分はそのように致しましょう」
この時アルバート様の代理を任されている私の立場からしたら、もっと厳しい処分を下すべきだったに違いない。
使用人が主人に対して恋愛感情を持ち、それを秘める事が出来ないなど本来あってはならない事。