夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
オレはずっと、勝手に思い込んでいた。
相手の気持ちや考えなんて聞かないまま、一人で先走っていたんだ。
自分とこの女とでは、住む世界が違うーー。
誰が、いつそんな事を言った?
女が今の関係をどう思っているのかも、これからどうしていきたいのかも知らず……。ただ自分一人で、考えて、想像して……不安がって、怯えていた。
「……まずお前が立つ土俵は、最初の最初だな」
「!……兄上?」
「まずは、"相手と一緒にスタートラインに立つ"事だ。
……言ってる意味、分かるよな?」
ようやく自分の間違いに気付けたオレに、兄上が週刊誌をもう一度見せながら問い掛ける。
今のオレがやるべき事。
それは、"この記事がデマであり、本当に想っている相手が誰であるのか"、あの女に……。
いや、スズカに伝える事だーー。
「はい!行ってきます、兄上!」
オレは笑顔になって頷くと、その日の仕事を全て他の者に任せて自宅へと急いだ。
仕事を投げ出して女の元へ行くなんて、これが初めての事だった。
……
…………。