夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
***

ジュゼの運転で戻ったオレは、車から降りると勢いよく走り玄関の扉をバンッと開けた。
突然のオレの帰宅に使用人長のエルナを始め、使用人達は驚きバタバタしながら玄関へ出迎えに集まってくる。
その中でオレが視線を走らせて捜すのは、たった一人。スズカ、彼女だ。

……しかし、見当たらない。

「っ……スズカは何処だ!」

「ス、スズカでございますか?彼女出したら自分の部屋に……」

「ーーッ!」

自分の部屋ーー。
そうエルナから聞いたオレはすぐさまその場を駆け出し、スズカの部屋へと急いだ。

会ったら伝える事は、車の中で何度もシュミレーションした。
まずは駆け寄り、正面から両肩を掴んで見つめる。大事な事だからな、おかしな前置きは省き、はぐらかさずにしっかり目を見て伝えるのが礼儀だろう。
きっと相手は何事かと目を見開いて見上げてくると予想されるから、そこで言うんだ。

オレが好きなのはお前だ!
オレと結婚して、これからは妻として堂々と傍にいろ!、とーー。

……よし!完璧だ。行くぞ!

「おい!いるか?開けるぞ!」

トントントンッとノックした後、オレは返事を待たずして部屋の扉を開けた。
すると、……。
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