夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

「ーーッ!アラン、様!」

「!っ……。何を、している?」

部屋の中に居た彼女を見て、オレは思わずそう口にした。
何故ならその姿と様子は、想像していたものとは全く違っていたから……、……。

服装は使用人(メイド)服ではなく普段着。ベッドの上に大きめの鞄を開けて、何やら荷造りをしているような……。まるでこれから何処かへ出掛けるような感じだった。

「っ、……何処かへ、行くのかっ?」

ドクンッと嫌な鼓動が音を立てる。
オレに見付かって気不味そうな、言いづらそうな雰囲気の彼女の様子に、胸が締め付けられて、今までの後悔が押し寄せてくる。
酷い扱いをした。ろくに会話もせず、毎夜のように抱き、逆らわないのを良い事に身体だけを目的とし性欲の処理をさせられていた、と思われても仕方ない。逃げたいと思われても仕方ない。
何処をどう思い返しても、愛想を尽かされて、出て行かれても仕方のない自分だ。

もう、間に合わないのかーー?

彼女の姿に、そんな想いが過ぎる。

……でも。
このまま何も伝えずに、絶対に終わりたくないと思った。
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