夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
けれど、ヴァロンが私と同じ立場ではないのなら……。
アカリ様とヴァロンが互いを対等に見ているのならば、私の命令などでは決して引き離せないと思った。
だから……。
「コレ、あんたからアカリに渡してくれねぇか?」
アカリ様がモニカ様と企画しているクリスマスパーティーの前夜。
そう言ってヴァロンが私に差し出してきたのは、えんじ色に白い真珠で装飾された小さな宝石箱。
「頼まれてて、ようやく直ったんだ。
アカリの両親の形見。大事なもんだから頼むよ」
両親の大事な形見ーー。
そう言われた宝石箱に、私は見覚えがあった。
アカリ様がこの別荘に来たばかりの頃、昔の生活に未練を残さないようにとアルバート様の命令で、ほとんどの物を処分させた。その時……。
『やめて!その宝石箱だけは捨てないでッ……!!』
壊れて音が鈍いからただのガラクタのように、私達が扱った品。
アカリ様があまりにも必死だったから免れたものの、一歩遅ければゴミとなっていた品だった。