夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

妊娠中、産み月、出産、そして今……。
わたくしが今を笑顔で元気に生きていられるのは、間違いなくヴァロン達の優しさのおかげだ。
婚約が破断した上に、その理由が"娘の父親が本当はマオ様ではない"という明らかなわたくしの汚点から、父ハンクとは現在絶縁状態。
家族から見放され、妊娠中のつわりの酷さから仕事も失った私。そんなわたくしに、ヴァロン達はいつも寄り添ってくれた。

ありがとうーー。

そう思いながらもなかなか言葉に出来ないのは恥ずかしさもあるけど、きっとそんな言葉では言い表せない程の気持ちだからだ。


「しっかし、"レノアーノ"なんてまた大層な名前付けたな!」

「!……え?」

「レノアーノ、って、あれだろ?有名な彫刻家が平等と平和を願って創った、育みの女神像!」

「っ、……ええ」

レノアーノーー。
突然出された娘の名前に、ボーッとしていた私は思わずドキッとしてしまった。
きっと深い意味はない、と思いながらも勘の鋭いヴァロンが"何か"察しているのかと……。
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