夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
この世界には、『育みの女神レノアーノの像』という物がある。
それは世界的有名な彫刻家ローレンツが十年程前に「これが私の人生の中での最高傑作だ」と、現役最後の作品として生み出した美術品。
赤ちゃんを抱いた女神レノアーノの周りには、人間、色んな種類の動物、たくさんの植物、そして人間離れ動物離れした悪魔や魔物のような生き物がいる。
それは"女神レノアーノの前では、いかなる生物も平等である"という、平和の象徴で……。
争いや差別をこの世から無くす為に創られた。
全てを差別なく育む女神。
それが、わたくしが娘に与えた名前レノアーノの由来ーー。
「自分の娘がそんな女神みたいになって欲しいって願望か?それとも、そんなにあの彫刻がお気に入りとか?」
「……まあね」
娘をあやしながら質問をぶつけてくるヴァロンに簡単に答えて、この話はさっさと終わらせようとした。
……でも、…………。
「ーーそれとも。この子の父親と何か関連がある、とか?」
「!!……っ」
一瞬、呼吸が止まった。
その言葉と、いつの間にかこちらに向けられていた視線に悟る。ヴァロンはやっぱり、気付いているのだと。
レノアーノの父親が、誰なのかーー。