夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
「っ、……言わ、ないでッ」
"どうしよう?"と感じたわたくしの口から、咄嗟に出た言葉。
"違う"という否定の言葉も、"さあね"なんて曖昧な言葉も、彼には通用しないとわたくしは分かっていたのだ。
「っ、お願い!!誰にも言わッ……」
「ーーシィ〜〜……」
誰にも言わないでーー!!
そう叫びかけたわたくしに向かって、片手で娘を抱きながらもう片手の人差し指を立てて自分の口元に付けるヴァロン。その様子にハッとすると、彼の腕の中で娘が静かに寝息を立てていた。
ヴァロンの腕の中が余程心地良いのか、娘の寝顔はとても穏やかで……。娘にもきっと、彼の優しさや美しい心が分かっているのだ。
その様子にわたくしも冷静になれる。
「言わねぇよ、絶対。約束する」
「……そうね。貴方は、そんな人じゃなかったわ」
ヴァロンの腕から娘を受け取り、そっとベビーベッドに寝かせる。
自分にそっくりな赤茶色の髪に瞳の娘。その容姿で産まれてきてくれたこの子を見た瞬間、とてもホッとした。