夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
「やっぱり、相手から触れられた瞬間の感情を読み取らないようにするのは難しいな……」
突如僕の中に目覚めた、不思議な能力。
触れ合った瞬間にその時の相手の感情が分かるのは、上手く使えば便利だったが同時に不便な面もたくさんあった。
僕の一族には変わった能力を持って生まれる人が稀にいるんだって、ディアスから聞いた。
でもその能力は人それぞれで、たくさん持つ人もいれば一つしかない人もいる。強い人もいれば弱い人もいる……。謎で未知数な能力。
目覚めた当初は、触れ合えばその人物の全てが僕の意志とは関係なしに流れ込んできてしまって……。つまり、聞きたくない、知りたくもない事まで分かってしまって辛かった。
今では何とか、自分から触れる時は制御出来るようになったけど、相手から触れられた際の感情を防ぐのは難しい。
だから、さっきも分かってしまった。
『やれやれ、ようやく使えるようになってきたな。
これくらい熟してもらわなければ婿として困るわ』
肩を叩かれた瞬間、表面上は笑顔だったハンク様はそう思っていた。
「……もっともっと、頑張らなきゃ」
人の表面からは分からない内面を知られる事は傷付く事や辛い事も多かったけど、僕はこの能力のお陰で仕事が出来るようになった。
相手が思ってる事、望みや願望、不安や不満。それが分かるだけで、話し合いや取り引きがとてもスムーズに行える。
そして、僕はこの能力があったから……ミネアさんの命を救う事が出来た。