夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
その個室は限られた人しか使えない特別な病室なんだろう。
他の病室や看護師が待機している場所からは離れていて、夜になるといっそう静か。
もう消灯の時間だと担当の看護師がついさっき伝えに来てくれたから、おそらくもう人が来る事はほとんどない。
話すなら、今なのに……。
「っ……ミネアさん、寒くないですか?
夜になるといっそう冷えますよね。布団、ちゃんと被った方が……」
「ッーー……やめてよッ!!」
上手く話が切り出せなくて、掛け布団をしっかり被せようとした僕の手をミネアさんが振り払った。
今までそんな風に彼女にされた事もなければ、声を上げられた事もなかった僕は、ただ戸惑って立ち尽くしてしまう。
すると、ゆっくり上半身を起こしたミネアさんが僕に言った。
「……どうして、何も言わないの?」
「えっ……?」
「言えばいいじゃない、みんなに……。
"僕の子供じゃありません"って、言えばいいじゃない!」
「っ……」
胸がズキンッて、傷んだ。
何故ならそう言う彼女は、半笑いなのに涙目で……。僕を睨みつけているようなのに、泣いているみたいで……。