夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
15歳から奉公に出て、もうすぐ九年。
でも私は勤めている年月が長いだけで、たいした取り柄もない凡人なのに……。
そんな私をアラン様が奥様専属の使用人に指名してくるとは、まさか思わなかった。
今も不安で不安で、断れるものなら断りたい。誰かに代わってもらえるのならば、代わってもらいたいくらいだ。
憂鬱な気持ちでベッドメイキングをしていると、数年前に同じような気持ちになった事を思い出した。
それは18歳の時、アラン様のお仕事を手伝う為にこの邸に下宿していたあのお方の専属の使用人になった時だ。
マオ様ーー。
あの時はアラン様の親戚の方と聞いていたあの方が、後に実はアラン様の異母兄弟だったと知った時は驚いた。
でも、確かに初めてお会いした時にお父上様であるリオン様に何処となく似ていると感じたっけ。
アラン様とご一緒の時やお仕事の際にビシッとしている時は一見クールな冷たい印象を受けるけれど、本当はとてもお優しい方。
夜お部屋で二人きりになる時、朝のお支度を手伝う時、私は仕事だと言う事を忘れて胸をときめかせていた。