夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

そうしたら私には、懐かしい想い出がよみがえってきたの。
マオ様と過ごした、あの初恋の日々の想い出が……。

身分差がありながらも、私を一人の人間として扱ってくれた。
私と言う人間を、マオ様はしっかり見てくれたの。
嬉しくて楽しくて、夢のような時間だった。


『名前で呼んでほしいんです。
私も貴女をスズカと呼びます。あと出来れば他のみんなの名前も教えてほしいな?』

だから奥様がそう言って下さった時、一瞬あのマオ様との日々を思い出した。
またあの頃みたいに毎日を楽しみに出来る気が、した。

……けど。
それはきっと気のせい、よね?

"まさか"と思った。
気を取り直して、いつも通り仕事をただ淡々と熟そうと思った。

でも、その予感は気のせいなどではなく……。


「では、お仕事に戻りま……」

「ーーまあ、奥様!いかがなさいましたかっ?」

ーーえっ?

使用人長の言葉にハッとする。目を向けると、奥様が私達の居る一階へ向かって階段を降りてくるところだった。
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