夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
「あ、スズカ。いたいた〜!」
「お、奥様!お呼びでしたでしょうかっ?気が付かず、申し訳ありませんっ!」
私に手を振る奥様の姿に、サーッと血の気が引く。慌ててすぐさま奥様の元へ駆け寄ると、深々と頭を下げた。
しまったーー。
お部屋に設置されている使用人を呼ぶ際に使用する呼び鈴の説明を、私は怠ってしまっていたのだ。
奥様自ら自分の事などを捜させてせてしまうなんて、何と言う事だろう。
本当に勤めている年数が過ぎていくだけで、自分は初歩的なミスばかりだ。
そう心の中で焦って反省をする私は、見えていなかった。私を見付けた奥様が、とても嬉しそうな笑顔をしている事に……。
「あ、違う違う!
あのね、お茶の時間にしないかな〜?って思って降りて来たの」
「!……お、お茶でございますね!すぐにご用意致しますので、どうぞお部屋でお待ち下さい!」
「あ、そうじゃなくて!
コレをね、みんなで食べたいなって思ったの」
そして奥様は、俯く私の目の前に四角いタッパーを差し出して……。パカッと蓋を開ける。
ふわっと香る甘い匂い。
中に入っていたのは、可愛らしい猫の形をしたクッキー。