夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

「だから、みんなでお茶会をしながら自己紹介をしていたんです」

「自己紹介?」

「はい。だって、これから一緒に暮らすのに名前も知らないんじゃ不便でしょう?」

「……それ、必要か?」

「必要に決まってるじゃない!
まさか貴方、みんなの名前を知らない訳じゃないわよねっ?」

「……。知らん」

「!っ……嘘でしょ〜?!」

いやいやいや!!
嘘でしょ〜?!は、こちらの台詞です!奥様!!

そのアラン様と奥様のやり取りを見て、その場に居たみんなは全員一致でそう思っていた。

これは、なんなのだろう。本当に今日は、夢でも見ているような信じられない事ばかりが目の前で起きている。

驚きのあまりただただお二人のやり取りを見つめる事しか出来ない私達に構う事なく、奥様は更にアラン様に向かって言葉を続ける。

「大体、使用人達にお茶の時間がないって本当?」

「それも、必要か?」

「当たり前よ!貴方だって疲れたら休憩するでしょ?お茶を飲むでしょっ?それと同じよ!」

「……」

「……貴方ね、自分が仕事に集中出来るのは一体誰のお陰か分からないの?疲れて帰った来たこの家が、いつも綺麗なのは誰のお陰?」

「……」

「みんな貴方と一緒で働いてるの。頑張ってるの。
そりゃ、貴方の稼ぎに比べたら小さいかも知れないけど……。みんなそれぞれ、自分の仕事を精一杯やってるのよっ?」

奥様のその言葉に、驚きはいつの間にか感動に変わっていた。
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