夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
それはずっと、この邸に勤める者みんなが主人に感じてほしいと思っていた事。
褒めてほしい訳ではない。特別な対応なんてしてくれなくてもいい。
ただ……。
「使用人は物じゃない。貴方の欲を満たす為の道具じゃないわ!
みんなが微笑ってくれて、仕事を少しでも楽しいって感じてくれた方が、嬉しいじゃない?
貴方だって、どうせなら笑顔でお出迎えしてもらえる方が、嬉しいほしいでしょう?」
奥様は今まで誰も口に出来なかった想いを口にして、にっこりと微笑んだ。
その笑顔は本当に本当にお美しくて、みんな視線を逸らす事が出来なくなっていた。
そして、そんな柔らかな空間に響くのは、笑い声。
「ふっ、……あははははっ!」
それはこの場で誰もが予想しなかった、私達が初めて見て聞くアラン様の笑顔と笑い声だった。
その光景に、私の予感は確信に変わる。
この邸が……。いや、私達の主人が確実に変わっていく事を。
奥様が……。いや、アカリ様が変えて下さるのだと。