ただ隣にいて欲しい


その日はたまたま部活が一緒だった。

「会えるかもね」

ほら、期待させる言葉。

「会いたいな」

もう自分の気持ちを隠すのは無理だった。

話している時も不意に大好きと言いたくなる。

思いがあふれて止まらなかった。



部活が終わり、下駄箱へ行ったとき、

いないはずの凌空がいた。

私が終わるのは2:00

凌空は1:00

「何でいるの」

驚いてぶっきらぼうな言葉が出てくる。

「美雪が会いたいって言ったじゃん」

こんなに優しくしないで。

期待しちゃうじゃん。

でも私はそんな優しいところが大好きなの。

嬉しい気持ちは大きいけど、

悟られるか不安で、目を見ることができない。

「送っていくから帰ろ」

と言って先に歩き始める凌空。

私は歩かず突っ立っている。

足が動かないほどびっくりしている。

私が後をついてきてないことに気が付いた様で、

どうしたのと言わんばかりの顔でこっちを見る。

気温のわりに少し冷たい風が吹く。

緊張で体温が上がっている私には心地よい。

「帰ろうか」

私は走って凌空に追いつく。


恥ずかしい、でもそれ以上に嬉しい。

「俺美雪のこと好きだよ」

もう私は天にも昇りそうだった。

「私も好き」

優しいところが、

誰よりも努力しているところが、

全部が好き。

バチッと視線が合う。

恥ずかしくて逸らしたいのに、

かっこいい凌空を見ていたいっていう矛盾がもどかしい。

凌空の顔もほんのり赤い。

照れているのは私だけじゃなかった。



これからどんどん春に近づく。

春はやっぱり出会いの季節。

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