Karma
しかし、何度かけても応答はなかった。
「どうしちゃったんだろう…?」
家に帰り、ベッドで布団にくるまって横になっていると、響介が部屋に入ってきた。
「来ないで…」
顔を背け、私が言う。
「…泣いてるの?」と響介。
私は涙をふく。
「どうせ理由は分からないでしょ?」
「分かるよ。美花のことだろ?」
私は目を見開く。
「美花を、覚えてるの?」
響介はベッドに腰かける。
「喰喰は何万単位の人間の記憶を改竄できるけど、完璧じゃない。特にその人を深く愛していたりすると、改竄を受けないこともある」
「それで私は美花を覚えてたんだ」
響介は「俺の場合は、ちょっと例外的な方法で記憶をとどめてるけどね」と付け加えた。