Karma

私は響介の方をむく。


「キスして欲しい。ダメ?」


響介はうつむく。


「ダメ…」

「なんで?」

「したくても、できないから…」


私は今まで、好きな人とキスをしたことがなかった。


キスなんて、男を騙すための道具でしかなかったから。


だけど、今の響介となら、私は。


「なんで響介は……私に触れようとしないの?」


私が言うと、響介の顔から血が抜けた。


「気づいてないと思った? 響介は手袋越しにしか私を触ろうとしないじゃん。肌と肌で触れあったこともないし、髪を撫でてくれたこともない…」


響介は「そんなこと…」と何かを言いかける。私は無理やり、響介の唇にキスを迫る。


響介は驚いたように顔を背け、キスを拒んだ。
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