Karma
部屋を見渡す。最悪、もう食べられてしまったのかも。
そう思った直後、震えながらテーブルの下に隠れる和哉の姿が目に映る。
いた。生きていてくれた。
少しだけ希望が見えた気がした。それと同時に、再び恐怖が襲う。
早く逃げなきゃ、殺される。
女は和哉からは背中を向けている。食べるのに夢中で、和哉の存在にはまったく気づいていないように思えた。
「和哉、早く逃げて。お姉ちゃんのところまで走って」
私は手話で和哉に伝えた。
……実は和哉は耳に障害があって、ほとんど音を聞くことができなかった。
和哉は小さくうなずく。
そして意を決して、一気に飛び出す。