Karma

桜はニヤっと笑う。


「そう。みんなのせいで、私は歌が歌えなくなった。せっかく歌い手として人気が出て、プロの歌手にもなれるかもしれなかったのに。みんながそれを台無しにした」


「本当に、いじめが歌えなくなった原因なの?」


私の言葉に、桜は顔をひきつらせた。


「そうだよ。だって私はみんなに否定されたトラウマで、声が出なくなって…」


「歌いたいなら、学校を辞めて歌の投稿に専念すればよかったじゃん。それにイジメのせいとか言う割には、ヘラヘラしてるし。はっきり言ってあんたのイジメの話は、言い訳にしかきこえないよ」


「言い訳? は? 何言って……」


「本当は怖かったんでしょ? 歌手としてプロに挑戦することが。だから自分が挫折する前の言い訳にイジメを使った。もしイジメがなければ、私は夢を叶えられた。そんな可能性の世界に逃げて、自分を守った。確かにイジメは最低の行為だよ。けど、あんたが歌えなくなったのは、結局、あんたが臆病だったからに過ぎないんだよ」
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