Karma

自業自得とは言え、なんだか桜がかわいそうに見えてくる。


「なんで……嫌だよぉ。怖いよぉ。私はみんなに認めてほしかっただけなのに。歌を認めてもらって、友達にしてほしかっただけなのに」


私は心の声はきこえないけど、桜の痛みは伝わってくる。


きっと最初は、小さな願いだった。


それが取り返しのつかないところまで来て、最後には後悔する。


「桜」


私は桜と目線を合わせると、右手の指先を左胸にあててから、右胸にあてる。


声はなくても、目で見ることができる言葉。


耳がきこえない和哉のために、子供のとき一生懸命覚えた手話だ。


『大丈夫。私がいるよ』
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