Karma
心地いい、温もりを感じる。
遠い昔を懐かしむような気持ちになって、心が軽くなっていく。
会ったことがある。私はこの人に。
「知っているさ。僕とメイが初めて出会うのは、これで“二回目”だからね」
そう言って、黒い手袋をつけた青年の指先が、私の頬を優しくなでる。
心を許しかけた自分がいる。
しかしそれを、もう一人の自分が許さなかった。
家族を殺した女のように。
この街の汚い大人たちのように。
こいつもまた、私から何かを奪おうとしているに決まっている。
「触んなっ」
私は青年への警戒を取り戻し、離れた。
「名乗るのがおくれたね。俺の名前は一ノ矢響介(いちのやきょうすけ)。ねぇ、メイ」
響介は私の強すぎる拒否反応にも、柔和な笑顔で対応する。
「事情はどうであれ、さっきのかつあげは関心しないよ」
いつの間に取られたのだろう?
響介の手には公園で私が奪ったお金が握られていた。
「は? 返せよ!」
私が響介に迫ると、