Karma
喰喰は肩を震わせる。
きっと喰喰が一番、辛かったのは、大好きだった俊太郎さんに裏切られたことだったんだろう。
「喰喰……いや、朱実。もう終わりにしよう。俊太郎さんの待つ世界へいこう」
朱実はしばらく沈黙したあと、首を横にふる。
「違う……!」
朱実が叫んだのと同時に、終末の時計は強い光を発し、長針が一気に動き出した。
「例えそれが真実であったとしても、私が裏切られ、辱しめられ、暴力の限りを尽くされた過去は変わらない」
時計の長針は11時をまわる。
「消えない過去がある限り、私は人間に復讐する。それが私が、喰喰となった理由だから!」
私は唇を噛み、悔しさと、切なさを感じた。
過去に捕らわれたら、人は前を向けない。
過去を捨て、今ある一瞬を生きるからこそ、人は未来を歩めるんだ。
「じゃあこれで、終わりにしようよ」