Karma

響介はきっと、喰喰について、そして私がなくした記憶について、何かを知っているのだろう。


けれど響介に話す気がないのは明白だった。


サイレンの音が迫る。


「それなら、ひとつだけ教えて。響介にとって私は、どんな存在だったの?」


私の発言に、響介の目は激しく動揺の色を見せた。


「私にとって響介は、“大切な存在”だったの?」


響介はしばらく顔を伏せ、押し黙る。


沈黙に、サイレンの音だけが響く。


「どうしても真実が知りたいのなら、凪瀬高校に入学するといい」


響介が言う。
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