Karma
肉じゃがを一口食べると、ほんのりと優しい甘味と、和風だしの旨みが口いっぱいに広がる。
それと同時に、目の前に懐かしい光景が広がる。
それは入院する前、体が弱かった私を想い、愛情を込めて肉じゃがを作ってくれたお母さんと、それを一緒に頬張る、和哉やお父さんの姿だった。
「この味、お母さんのと一緒だ…」
私が言うと、響介は幸せそうに微笑んだ。
「よかった。昔の記憶を頼りに、メイのお母さんの味を再現してみたんだ」
「私のお母さんを、知ってるの?」
「ああ、俺とメイは幼馴染みだったからね」
私との過去を語りたがらない響介が、うっかり口を滑らせたように言う。
そっか。
私と響介は幼馴染みだったんだ。
「響介…」
「なんだい?」
「気を失ってたとき、夢を見たの。すごく不思議で、悲しい夢を…」