Karma
箸をとめ、私が言う。
「誰だかは分からないけど、私は“大切な誰か”に、閉ざされた扉越しに、ずっと泣きながら話しかけてた。
その子が最後に『ボクの不幸はね。あなたを…』って言ったところで、目が覚めたの。あの続きは、なんだったんだろう?」
響介にきいても分かるはずないけど、私は誰かにきいてほしかった。
きっとこれも、私がなくした記憶の一部なんだろう。
響介はしばらく考えたあと、口を開いた。
後から思えば、それが正解だったんだと思う。
「きっとその子は、
こう続けたと思うよ。
『ボクの不幸はね。あなたを愛してしまったこと』だって…」