Karma

「それで、どうして美花はお父さんを?」


屋上に強い風が吹く。スカートがなびき、ひんやりと肌に刺さる。


「美花のお父さんはヤクザに……風花ちゃんを売ろうとしたの」


私は目を見開く。


「美花が止めに入って、未遂で終わったけど、ヤクザとお父さんが激昂して、風花ちゃんに襲いかかった。


美花は、それまでためてきた怒りもあって、初めてお父さんに手を上げた。風花ちゃんが止めるのもきかずに、何度もお父さんを殴った。あとちょっとで、殺していたかもしれないくらいに。


ヤクザの男も重症だったけど、不意をついて、美花に鉄アレイを投げた。それを、風花ちゃんがかばって」


しばらく言葉が見つからなかった。


風花ちゃんはその後、脳に損傷を負って植物状態になってしまったという。


美花はそのことを、今でも自分のせいだと責め続けている。
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