Karma

「止めて…」


動けない私は、喰喰に向けて叫ぶ。


「お願い、止めて! 美花が何をしたっていうの? あんたに美花を殺す権利があるの?」


私の叫びに、喰喰はピタリと動きを止める。


美花は血まみれになりながら、かろうじて意識をつなぎとめている様子で、鉄格子にもたれかかる。


「クフッ、フハハッ…」


みるみる喰喰の人形のような表情のない顔が、歪んでいく。


「ハハハハハ」


喰喰の笑い声が、橋の上に響く。


その声には、風花のために命を犠牲にしようとした美花を、そして、そんな美花を大切に想う私と祐希を……腹の底からバカにするような、皮肉と悪意がこめられていた。
< 99 / 250 >

この作品をシェア

pagetop