【完】桐島藍子の記憶探訪 Act1.春
「猫、好きなの?」
「好き。昔、おじいちゃんが飼ってたの。どっちも、もういないんだけどね」
「……そっか」
これは思い切りまずった。
あまりに子猫を可愛がるものだからと尋ねてみれば、まさか踏み抜いたのが地雷だったとは。
ここ数日、コミュニケーションが少し上手くいっていない気がするぞ、僕。
「気にしないで。これから会いに行くから」
「これからって、お墓参りか何か?」
「うん。あ、今日じゃない。近々。近日中?」
「いや、別に何でもいいんだけどね」
近々と近日中って、それもうほとんど同じ意味だと思う。
「寒い…」
短く呟くと、少女はファーの付いたジャケットのフードを被り直し、子猫を撫でていない方の手はポケットの中へ。見た目には何とも似つかわしいスタイルだ。
「お兄さんは寒くないの?」
「ちょっどだけね。地元の冬に比べれば、なんてことはないくらいかな」
「そっか」
とそれだけ言って、少女は再び子猫を撫でる手に目を落とす。
不思議な子だ。
驚いたり嬉しそうにしたりと表情豊かな子かと思えば、以降はずっと同じトーンで会話が進められている。
口調もクールで落ち着いていて。
無言と無口が続く中、そんなことを考えている内、意識は段々と、夢の中へと落ちていった。
「好き。昔、おじいちゃんが飼ってたの。どっちも、もういないんだけどね」
「……そっか」
これは思い切りまずった。
あまりに子猫を可愛がるものだからと尋ねてみれば、まさか踏み抜いたのが地雷だったとは。
ここ数日、コミュニケーションが少し上手くいっていない気がするぞ、僕。
「気にしないで。これから会いに行くから」
「これからって、お墓参りか何か?」
「うん。あ、今日じゃない。近々。近日中?」
「いや、別に何でもいいんだけどね」
近々と近日中って、それもうほとんど同じ意味だと思う。
「寒い…」
短く呟くと、少女はファーの付いたジャケットのフードを被り直し、子猫を撫でていない方の手はポケットの中へ。見た目には何とも似つかわしいスタイルだ。
「お兄さんは寒くないの?」
「ちょっどだけね。地元の冬に比べれば、なんてことはないくらいかな」
「そっか」
とそれだけ言って、少女は再び子猫を撫でる手に目を落とす。
不思議な子だ。
驚いたり嬉しそうにしたりと表情豊かな子かと思えば、以降はずっと同じトーンで会話が進められている。
口調もクールで落ち着いていて。
無言と無口が続く中、そんなことを考えている内、意識は段々と、夢の中へと落ちていった。