【完】桐島藍子の記憶探訪 Act1.春
 高宮さんが帰ってしばらく。
 ふと、気になったことを尋ねてみた。

「ところで、桐島さん。あの……貴女は、図書館を…?」

 桐島さんは無言で頷いた。

「そう、ですか…」

「サヴァンのお陰で人より記憶力が良いと言っても、やはり完全ではありませんから。考えられるものの中にないことが分かってしまったので、図書館に頼る他ありませんでした。何を忘れてしまったのか、すぐに分からないのが難点ですけれど」

「高宮さんにも手伝ってもらって、本を探せばよかっただけなのでは?」

「すぐに見つかれば、それでよかったでしょう。けれども、大袈裟な言い方をしますと、事はおそらく急を要します。ですから、あまり時間をかける訳にもいかなかったのですよ」

「急を…?」

「その内、分かるタイミングはちゃんとやってきます。あの子のお手伝い、どうかお願いいたしますね」
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