【完】桐島藍子の記憶探訪 Act1.春
 するとすぐに返事は来、分かったとの四文字だけが画面に映し出された。
 まったく、どうしてこうも兄妹で文章量が違うのだろう。
 兄さんはもっと丁寧だぞ、妹よ。

『大学の場所分かる?』

『(・_・ =・_・)』

 へえ、顔文字は使うのか。
 文章量は少ないけれど、文字の上では多少テンションが高い、と見ていいのだろうか。
 まったく、女の子は分からない。

『了解。なら迎えに行くよ。どこで待ち合わせようか?』

『駅前のスタバ』

『了解。多分、店内で適当に待ってるから、声かけるかメッセージ送って。私服に着替えてね』

『ん』

 ふむ。
 並んだ文章だけ見ると、一方的な業務連絡にしか見えないな。
 葵の了解も得られた所で、未だ下着すら身に着けていなかったことを思い出す。意識し出すと寒さも襲ってきて、ついぞくしゃみまで出て来る始末。

 早いところ服を着て、温かくして布団に潜ろう。
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