【完】桐島藍子の記憶探訪 Act1.春
混色。
桐島さんの言うそれは、ぐちゃぐちゃだということ。
色覚を感じる目で見た、今の僕の内側だ。
そうか。
焦っていたのは、葵だけじゃなかったのか。
焦る葵を見て、取り乱す葵を見て、僕にすがる葵を見て、一番焦っていたのは――
「別れた時の君は……少なくとも、濁ってはいなかった筈ですよ。葵ちゃんの為にって、強い意志の表れが視えていたからこそ、私は君を行かせたのですから」
そうだ。僕は、葵の為に。
思いは変わらない。
変わっていたのは、心の在り方だけだった。
「桐島さん」
「はい」
目が覚めた葵に、しっかりと現実を見せて。
その上でもう一度、探そう。
「僕にも椅子をください。少し休んで、その後に」
「えぇ、分かっていますとも。遥さん」
「は、はい…! はいこれ、まこと」
「…ありがとうございます」
遥さんが持っていたそれを受け取って開いて、葵からはやや離れたそこに設置して、一旦心を落ち着かせようと深く、深く座った。
気持ちに反してそれは、意外にも効果的に心を落ち着かせてくれて。
辺りを眺めていると、少し穏やかになった。
桐島さんの言うそれは、ぐちゃぐちゃだということ。
色覚を感じる目で見た、今の僕の内側だ。
そうか。
焦っていたのは、葵だけじゃなかったのか。
焦る葵を見て、取り乱す葵を見て、僕にすがる葵を見て、一番焦っていたのは――
「別れた時の君は……少なくとも、濁ってはいなかった筈ですよ。葵ちゃんの為にって、強い意志の表れが視えていたからこそ、私は君を行かせたのですから」
そうだ。僕は、葵の為に。
思いは変わらない。
変わっていたのは、心の在り方だけだった。
「桐島さん」
「はい」
目が覚めた葵に、しっかりと現実を見せて。
その上でもう一度、探そう。
「僕にも椅子をください。少し休んで、その後に」
「えぇ、分かっていますとも。遥さん」
「は、はい…! はいこれ、まこと」
「…ありがとうございます」
遥さんが持っていたそれを受け取って開いて、葵からはやや離れたそこに設置して、一旦心を落ち着かせようと深く、深く座った。
気持ちに反してそれは、意外にも効果的に心を落ち着かせてくれて。
辺りを眺めていると、少し穏やかになった。