【完】桐島藍子の記憶探訪 Act1.春
 表示されたのは《新着メッセージ:兄貴》の文字。

 中身は見ないままで葵に渡そうと手を伸ばすと、

「こっち、見ないで……今、絶対きたない顔してるから」

「人のズボンを散々濡らしておいて何を。はい、遥さんからだよ」

「……こっち見んなぁ…早く貸して、カメラで――」

 強引に取り上げ、顔を確認するからとカメラを起動させた時、葵の表情が一変した。
 目を見開き、呼吸を止めて、ただその画面に食いついて固定されている。
 と、葵が、



「いた…」



 震える唇を頑張って動かして、小さく、けれども確かにそう言った。
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