【完】桐島藍子の記憶探訪 Act1.春
「やっぱり、難しそうだな。葵の言い分だと、変わらなきゃ好いてくれる女の子も出来そうにない」


「まあ、そうだろうね。過剰なのも嫌だけど、自分も認められる人じゃないと」

「手厳しいな。程々に、自分なりに変われたらいいか」

「そういうこと。その時になって彼女の一人もいなかったら、もう一回告白してあげるよ」

「そ、れは……嬉しいけど、何だか慰められているような気がするね」

「ふふ」

 葵は悪戯に笑って、また僕の膝に頭を預けてきた。
 そのまま、再び構えたスマホのシャッターをパシャリ。

 パシャリ、パシャリ。
 数枚撮って、ポケットにしまった。

「いい雰囲気なとこ悪いんだけどさ」

「何?」

「いつから、僕のお悩み相談室になったんだろう」

「言われれば。せっかくおじいちゃんと再会できたのに」

 葵は膨れて僕の膝を叩く。

「痛い痛い」

「お詫びとお礼を兼ねて、膝、あと一時間は貸して貰うから」

「痺れた時は解放してくれると助かる」

「ふん、嫌だよ」

 べ、と控えめに短く舌を出して、通潤橋に向かい合う。



 今は――今だけは、何も気にせず好きなだけ堪能してもらおう。
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