諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
 この人が有家さんなんだ。話には聞いていたが、こうして実際に会うのは初めてだ。勝手にもっと年上の人を想像していたけれど、理人さんとあまり変わらなそうに見える。

 私がそんなことを考えていると、「少々お待ちください」と理人さんに断りを入れた有家さんが、こちらに近づいてくる。

「専務の秘書をしております、有家と申します。遠方での仕事のときのみ私が運転手も兼ねておりますので、本日はお迎えに上がりました。ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません」

 爽やかに口角を上げて挨拶する有家さんは、狼狽える私に名刺を差し出した。

「そうだったんですか……」

 それを受け取った私は、未だぼんやりと目の前の有家さんを眺める。

 理人さんは普段自分の車で仕事に行っていたから、秘書の有家さんが運転手もしているなんて知らなかった。遠方に行かなければいけないということは、理人さん、帰りは遅くなるのかな。
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