諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
 つい考えを巡らせていた私は、思い出したように「すみません」と自分もポケットから名刺入れを取り出した。

「古城静菜と申します。有家さんのお話は理人さんから常々――」

「やはりあなたが」

 私の名を聞いた途端、有家さんがぱっと目を輝かせる。予想もしていなかった反応に、私は思いがけず目を丸めた。

「専務のフィアンセだと伺っております」

 理人さんが!?

「話したのは社長だ」

 すかさず理人さんが会話に割り込んでくる。

 理人さんのお父様が。そうだよね。理人さんがフィアンセなんて言って私の話をする姿など想像できない。

 私がひとり納得していると、有家さんを挟んださらに向こうで理人さんがうんざりとした面持ちになるのが見える。
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