諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
「なにか忘れものですか?」

 私がわずかに首を傾げる。すると、理人さんは、

「今日も帰りは遅くなる。待ってないで寝てろよ」

 と無愛想に言う。

「……わかりました」

 私が瞠目しながら返すと、彼はそのまま行ってしまった。

 今日は私が聞きそびれたから、わざわざ戻って来てくれたのかな。

 そう思うと、じっとしていられないほどの歓喜に心が波打つ。

 普段は教えてくれないのに、理人さんって実は天邪鬼(あまのじゃく)なのかも。でも、たとえほんの少しでも、理人さんの日常の中にたしかに私がいるんだ。

 私は眉間をほんの少し持ち上げて微笑む。
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