諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
「……理、人……さん?」

 私は自分の耳を疑う。

「他の男に助けてもらうくらいなら、どうして俺に助けてって言わない」

「助けて、くれるんですか?」

 私は涙声で言った。すると、理人さんは呆れたように大きく息をつく。

「俺はお前の婚約者だろ。そして、お前も俺のものだ」

 投げつけるように発せられた言葉に、涙が堰を切って溢れ出した。

「それに、今さらうるさいお前にいなくなられたら困る。何十年も人につきまとっておいて、勝手に消えようとするな」

 理人さんが、しがみついて泣く私の頭を乱暴に撫でる。

「理人さん……。好きです。あなたが好きで、好きで、胸が苦しかった」

 私は子供のように嘆いた。震える私の背中を理人さんが優しくさすってくれるので、涙はなかなか止まりそうになかった。
< 180 / 199 >

この作品をシェア

pagetop