諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
 そのせいか、物心ついたころから事あるごとに『古城のひとり娘として』と言われ続けていた私は、きっと、将来は自分の意思だけでは決められないものなのだとなんとなく理解していた。

 だが、まさかこんなに早く婚約者まで決められるなんて想像もしていなかった。私、まだ小学生なのに。

 先日父から聞かされたばかりで、正直まだ実感もない。相手が会ったこともない人と言うのだから当たり前かもしれないけれど。

 自分の家が、やはり普通ではないのだと身に染みた。

 人生これからで、たくさんの人に出会って、誰かに惹かれる瞬間も訪れるかもしれない。それでも私には、今から会う婚約者と結婚する未来が決まっているのだ。

 今の時代に、普通に恋をするのも許されないなんて。

 ひそやかに眉尻を下げていると、障子が開けられる音がして、父が誰かに挨拶をする声が聞こえてきた。
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