諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
 今度こそ奇跡よ起これ、と心の中で願う。だが、理人さんはなにも言わない。つかの間の沈黙が流れ、私は気づかれぬように小さく息をついた。

 ……今日もダメか。この間会ったところだし、理人さんにとったら決められた誕生日やクリスマスすら煩わしいんだもんね。

 そう思い、私が口を開こうとした瞬間だった。

『週末。十三時に迎えに行く』

「えっ?」

 突然沈黙を破って発せられた言葉に、私は驚きの声を上げた。

「あ、会ってくれるんですか?」

「お前が言ったんだろ。嫌ならなしだ」

「待ってます! 朝の五時でも、夜中でも!」

 私は慌てて声を張り上げる。

『馬鹿。十三時って言っただろ。誰がそんな時間に行くか』

「すみません」

 そう言うけれど、私は口調に喜びを隠しきれなかった。
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