諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
 すると、「こちらこそ。さぁ、入ってください。私の家族も紹介します」と告げるスーツ姿の男性に招き入れられ、私たち家族は座敷の中に足を踏み入れる。

「妻の梨絵(りえ)と――」

 待ち構えていた様子の生成り色の上品なワンピースを着た女性。すると、女性の隣に、すっと黒い影が現れる。

「息子の理人(りひと)です」

「はじめまして、吾妻理人と申します」

 濃紺のスーツを身に纏った男の子が、落ち着いた口調で発した。

 ――理人、さん。この人が私の……。

「静菜」

 促すように発する父の声に、はっとする。

「は、はじめまして、古城静菜と申します」

 私は慌てて男の子に告げた。
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