諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
「鼻が赤い。乗れ」

 そう言って私の鼻から手を離した理人さんは、助手席のドアを開けて待ってくれる。

「乗っていいんですか?」

 少しでも顔を見られたらと言ったから、家でお茶をするだけという可能性も考えていたのだけれど、どこかへ連れて行ってくれるんだ。

「乗らないなら帰るぞ」

 ドアを閉めようとする理人さんに、私は急いで駆け寄り彼の腕を押さえる。

「乗ります!」

 私は必死の形相で告げて、無理やり車に乗り込んだ。困ったように片方の眉を上げていた理人さんも、ドアを閉めて運転席にやって来る。

 シートベルトの金具をはめる音がして、車は静かに走り出した。
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