諦めて結婚いたしましょう～一途な御曹司の抑えられない独占欲～

　業務全般の管理に、社長の補佐までこなさなければならない専務取締役の仕事はそれなりに大変なはずだ。それが大手企業の吾妻電機となればなおさらだろう。

　私の父も、理人さんは急なトラブルや海外出張にも積極的に対応しながら、日々事業拡大に向けての企業戦略の立案なども行っていて、いつか吾妻グループを引き継ぐ身としてあんなに頼もしい存在は他にいないだろうと絶賛していた。

　すなわち、毎日目が回るように忙しいと思う。

　電話をした日は会える喜びで舞い上がり考えがそこまで及んでいなかったが、休日くらいゆっくりと身体を休めたかったかもしれない。

「お前だって休みだろ」

　私に一瞬視線を移した理人さんが、無表情のまま答える。

「そうですけど……」

「会いたいと騒いだり、急にしおらしくなったり、本当に面倒臭いやつだな」

　そう言われれば、その通りで反論できなかった。