諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
 十五年前、初めて理人さんに会ったその瞬間から今日まで、常に想ってきた。

 こんなにも好きなのに、何度も伝えてきたつもりだったのに、もしかしたらと期待したところだったのに……どうして今さら疑ったりするの?

 肩を掴んでいた力強い手のひらの感触を思い出し、私は息詰まるような切なさを感じる。

「好きなんです。本当に。誰よりも理人さんのことが。この気持ちが恋じゃないなんてありえません」

 私の声は震えていた。こちらを見据えて話を聞いていた理人さんが、ふいに視線を逸らす。

「俺はお前のままごとに付き合わされるのは御免だ」

 一方的に告げた彼は、私の返事を待たずに車に乗り込んだ。

「待ってください、理人さん!」

 私は窓の向こうにいる理人さんに訴えかけた。

 行かないで。

 しかし、私の願いは虚しく、無情にも彼を乗せた車は闇の中に溶けていった。
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