諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
「馬鹿」

 狼狽えて身体を縮こまらせる私に、理人さんは優しく諭す。私はつい熱くなっていた恥ずかしさよりも、ふいに覗いた彼の笑顔に鼓動を高鳴らせた。

「俺たちには、どうしても背後に家が付きまとう。社会に出ればそれはより大きくなって、切り離してひとりの人間として評価してもらうのは難しくなるだろう。だが、それがどうした」

 予想外の発言に、私は「えっ?」と驚きの声を上げた。

「家も含めてお前だろう。いいことばかりじゃない。古城の人間として今日まで生きてきたお前の苦労もわからないやつに、なにを言われても気にするな。今まで必死に頑張ってきたなら、自分の一部を否定してやるな。古城社長も悲しむぞ」

「理人さん……」

 感慨に打たれ、胸に温かさが染みわたる。
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