諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
「だが俺も、吾妻の名前や肩書がなく、純粋に自分自身だけの力を試せたらと考えたこともあったけどな」

「理人さんも?」

 私が問い掛けると、理人さんは柔らかく目を細めて微笑んだ。

「あぁ。だからお前が本気でやりたいと思うなら、古城社長とちゃんと話し合え。さっきのお前の思いを古城社長にも伝えてあげろよ。そしたらきっと、わかってくれる」

 理人さんも、色々悩んだときもあったんだ。理人さんの言う通り、お父さんにありのままを話したらわかりあえるかな。

 わずかに残った不安を払拭しようと、理人さんを見つめた。

 すると、なにかを思い出したような理人さんが、「あっ」と呟く。小首を傾げていた私の額を、彼が軽く小突いた。

 私は困惑して額を押さえる。
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