諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
「お邪魔します」

「なにか淹れてくるから、座ってろ」

 部屋の前で私が来るのを待ってくれていた理人さんは、リビングに入るなりすぐ左手にあったキッチンへと向かう。

 私はすぐに離れていこうとするその背中を追いかけるように、うしろから抱きついた。

「待ってください」

 行かないで、と告げるように、腕に力を込める。理人さんは歩みを止めた。

「私、やっぱり理人さんが好きです。気持ちなんて目に見えないから証明できないかもしれません。でも、私にできるのは、結局心を込めて言葉や態度で伝えることだけなんです」

 語尾が頼りなく震える。理人さんからの反応はない。気遣わしさに押しつぶされそうだった。
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