殺した気持ち
「悔しいとか、思わないの?」
「うーん、思いませんね。あまり競争心が無いっていうか。なんていうか、結局、ぬるま湯に浸かって生きてきたんで、危機感とか、無いのかもしれませんねー。」
「いいなあ。ひとりっ子は。私なんて、4人姉妹だから、したくなくても競争、強いられてたもん。」
ですよねー。もう少し向上心とか、そういうの、持たなきゃですね。そう締めて、この会話は終わった。
いつからだろう。悔しさとか、あまり感じなくなったのは。小さい頃はよく、「わたしが勝つまで終わらないで!」とかわがまま言って、トランプとかしてたのにな。負けず嫌いだねって、言われてた。いつからだっけ。負けても、しょうがない、勝てそうになかったし、と都合よく自分を納得させるようになったのは。あ、そうか。悔しさ、殺したんだった。悔しさは無駄に心を削る割に見返りが小さいから、感情まるごと殺して、土に埋めたんだった。