上司を甘やかす方法
はじまり




大河内 史花(おおこうち ふみか)29歳。

最後に彼氏がいたのは一年前。
わたしとは結婚が考えられないって
振られてそれからは…何もない。


別にいい。仕事だって充実してるし、
わたしは一人が好きだから。


「主任!大河内主任!!」

声をかけられてハッとする。

「あ、ごめん。集中し過ぎてた。」

声をかけられた方を見ると、南部 朱莉(みなべ あかり)
彼女は5年目で27歳。

新卒から同じ部署でランチをしたり、
帰りにはよく飲みに行ったりしていた。

そんな彼女ももうすぐ結婚して、
仕事は続けるものの、
これからは誘いにくくなるだろう、
と、めでたいことなのに少し寂しい。

本人には、言わないけど。


「どうしたんですか?
最近根詰めすぎじゃないですか?」


「そんなことないけど?」

「えー、そうですか?主任になってから特に!
わたしはフミさんのこと一番
心配してるんですからね!」

最近主任という役職に就いた。
特に変わりはないけれど、
チームリーダーとして、
企画を纏めたり、仕事を振り分けたり、
それなりに忙しい。

でもわたしは忙しいのが嫌いではない。

「ありがとう。でも本当に大丈夫だから。」

朱莉ちゃんは優しくて気が利く。
そりゃ結婚相手もいるはずだ。


あ、ダメダメ。卑屈っぽくなるな。


自分を落ち着かせてまた仕事に向き合う。
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