上司を甘やかす方法
「…史花さん?
俺、史花さんが好きです。」
あんなに酷いことを言ったのに、
まだ上司として居ていいのか。
「…ありがとう。わたしも本当にごめんなさい。これからもよろしくお願いします。」
と、答えると、盛大な溜息。
「史花さん?
人の告白、何だと思ってるんですか?」
「…え?」
告白?と思うけれど、
駄目だ、期待しては、と自分に言い聞かせる。
「史花さん、本当に本当に好きです。」
駄目だ、期待してしまう。
「そろそろ俺、ちゃんと見て下さい。」
椅子ごと斎藤くんの方に向けられて
「俺は史花さんが好きなんです。」
「…うそ、だ。
上司、と、して、でしょ?」
「俺の好きな人、
めちゃくちゃ可愛いって言いましたよね。」
「うん、。」
「責任感が強いところも、
涙脆いところも、
強がりのところも、
本当は寂しがりやなところも、
しっかりしてるのに、どこか天然なところも、
そして自分ばっかり、
しんどいの受け持って、
自分が損しても人のことを守ってあげられる。
あなたの全部が本当に可愛くて
俺が守りたいと思ってしまうんです。」
「…」
「史花さん、俺、めちゃくちゃ好きですよ。」
「…わたし、は、」
すごく嬉しいのに、
この人の手をとってもいいのか、と
迷っている自分もいる。
「好き、以外、受け付けません。」
「…わたし、」と
中々言葉が出てこないでいると、
「ちょっと、待って。急に不安になる。」
わたしの椅子の肘掛に手を置き、
わたしと向き合う形で、
でも今は頭を下げている。
「斎藤くん?」
その声に顔を少し上げた彼に
キスをした。